監督失格(ネタバレアリ)

平野勝之監督、林由美香主演、庵野秀明プロデュースのドキュメンタリー映画「監督失格」、六本木のTOHOシネマで先行上映が始まっていたので早速初日に観てきました。林由美香さんは1989年頃、有名なAVアイドルだったので、もちろん知ってはいましたが、ビデオを借りた記憶はないです。その頃は星野ひかるや森村あすかが好きだったので…ってそんな話はどうでもいいですね。
 なので平野監督が林由美香と自転車で北海道に不倫旅行に出かけたドキュメント作「由美香(わくわく不倫旅行)」や松江哲明監督の「あんにょん由美香」も観た事はありませんでした(監督失格を観た後には二本とも観ましたが)。
で、平野監督の作品に関してはこれまでに観たのはおそらく一本だけです。ただ、その一本に僕はかなりの衝撃とトラウマを受けました。それが
「わくわく不倫旅行2」です。
 この作品は映画「流れ者図鑑」として一般公開もされましたが、僕が観たのはAV版の方だけです。これ観た当時はホント「なんだこりゃ!?」って
感じでしたよ。「監督失格」にもちょっと使われてましたけど、この時の平野監督は本当にひどい。で、旅に同行した女性はAV女優じゃなくて自主制作映画の監督の卵みたいな人だったのですが、監督に追い詰められストレスでキレていく様子はマジでホラーでした。だた、これを見てエンターテイメントの末端に関わる仕事をしてる人間としては「お前は表現者としてここまで自分をさらけ出せるか?」と、そして男としては「惚れた(惚れかけてる)女性に対してここまでズタボロの姿を見せれるのか?」と、二重にトラウマを植えつけられました。実際、作品はめちゃめちゃ面白かったけど二度と観ていません

というわけで「監督失格は」久しぶりに観る平野監督作品になりました。
映画の前半部は「由美香」の再編集パート。先ほども書きましたが僕は「由美香」を観てなかったので新鮮な気分で観れました。「わくわく不倫旅行2の時と違って監督ずいぶん優しいな…ていうか由美香にベタボレじゃないかw」とほのぼのしたり(2では本当に怪物みたいでしたからね…)、
ただ、旅の終わりに二人が喧嘩してフェリーの上でいきなり由美香をはたくシーンはドキッとしましたね。またその気まずい場面の二人の後ろの方で若者達がのん気に歌を合唱しているというコントラストが絶妙でした。

そして旅から帰って別れてしまった二人ですが、その後も友人関係は続き、映像は2005年に移ります。平野監督は仕事で久しぶりに林由美香とハメ撮りしようとして、彼女の誕生日にアパートに向かうのですが、チャイムを押しても電話をかけても返事がありません。「仕事をこんな風にすっぽかすヤツじゃないのに…」と不審に思った監督は由美香ママに連絡を取り、合鍵を使って部屋の中に入ります。そして、奥の部屋で既に死亡していた由美香さんの第一発見者となってしまいます。

この時、平野監督のお弟子さんが部屋に入る前からずっとカメラを回していたんですが、救急車を呼ぶため隣の部屋の人に住所を聞きに行く時、廊下にカメラを置いていきます。その結果…こういうと不謹慎かも知れませんが…奇跡というしかない映像が撮影されてしまいました。平野監督は「由美香」の時に由美香さんに何度も「監督失格ね」言われたように、この時もそのカメラを持って奥の部屋に行って撮影しようとはしませんでした。そのかわり(感情をなくしたように)冷静に警察に電話をしたり現場の状態を保持しようとしています。そして、奥の部屋に行くのが怖い由美香ママは廊下で由美香さんの名前を何度も絶叫し、慟哭し、泣き崩れます。そこへ由美香さんが飼っている犬が無邪気に飛びついてきます。作り物ならばあまりにベッタベタなこの一連の場面を置き去りにされたカメラが完璧にとらえていました。このシーンは本当にもう筆舌に尽くしがたいものでして、この場面が終わった後、気づいたら僕の手が凄く冷たくなっていました。

結果、この時の映像は由美香ママと平野監督、制作会社の間で念書を交わして封印される事になりました。そしてそれから五年間、林由美香の死を引きずって新作映画を撮れなかった平野監督。

映画の後半、舞台は2010年に移り、まさにこの映画を作るためにもがき苦しむ平野監督の日々が映しだされます。由美香ママの承諾をもらいあの日の映像を使える事となった監督ですが、この映画を作ることにどうも気乗りしない様子。結局それはこの映画を作る事によって由美香さんの死を受け入れてお別れしなければならないのが嫌だから。その気持ちに気づいた監督は自分なりの決別の儀式を行うべく、カメラを持って深夜の住宅街を自転車で爆走しながら、「監督失格ね」と言った由美香さんに向けて「これならどうだ由美香!」、「いっちまえー!」と絶叫します。
はたからみるとキ○ガイみたいな行動ですが、本当に感動的なシーンでした。基本重たい作品ではあるのに、この疾走するラストシーンによって、どこか清々しい印象が残りました

ただ、この後半の2010年の新撮パートには物足りなさがあります。庵野プロデューサーのインタビューによると、平野監督が最初に編集したものは「由美香」の映像と、死亡の日の映像だけでまとめたようなもので、「もっと平野さんを追い詰めないと」と思ってダメ出しをガンガンしたそうなのですが、予告編で使われていたダメ出しをされてグチャグチャになってる平野監督の姿、そしてパンフで平野監督が「映像編集で死亡の日の映像を何十回も見てて気が狂いそうだった」と言ってましたが(ちなみにこのパンフ、900円とお高いですが絶対に買いですよ!)、ならばその編集してる時の平野監督の姿も見たかった。要するにこの映画を製作してる時のドキュメント映像がもっと見たかったんです。その葛藤の日々からいかにしてあのラストの疾走に至ったのかを。ただまぁそれをやると本当に一般に受ける作品にはならなかったとも思いますけどね(DVDの特典映像に期待します)。
映画評論家の町山智浩さんがtwitterで「自分の妻にカメラを向けて「林由美香に執着する夫をどう思う?」とインタビューするシーンが欲しかった」と書いていましたが、それはまぁ確かにそうで、実際、わくわく不倫旅行では奥さんも登場していて、林由美香と二人で自転車旅行に行くと聞かされて全身の力が抜けてへたりこんでる映像とかも撮ってるんですよね。ただ今回の映画は平野監督が林由美香の死となんとか向き合うためのものだったので、それ以外の要素は入れなかった(撮れなかった?)のかなぁとも思います(まぁDVDの特典映像にry)。

あとは、カンパニー松尾監督が平野監督と林由美香さんの思い出話を語るシーンはやはり楽しかったですね。両人とも由美香さんに振られてるわけなんですが、その振られた男達が振った女についてあれこれ話すのはグッときました。後年、主に酔っ払った由美香さんの世話をさせられていたという井口昇監督にも出てもらいたかったですね。

というわけで確かに衝撃的なシーンもあり、大変な作品でもあるんですが、僕は「わくわく不倫旅行2」の時のように二度と見たくないという感じにはなりませんでした。むしろ近いうちにもう一回観に行きたいし、平野監督の完全新作を早く観たいと思っています。


ちなみに「由美香」と「流れ者図鑑」はレンタルとかではなかなか見つからないですが、AV版の「わくわく不倫旅行1、2」ならV&Rのサイト(注意:リンク先は18禁のサイト)から一本900円弱でダウンロードできます(僕も早速二本とも購入しました)。
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by koshibaken | 2011-09-05 09:32 | 映画


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