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クリード チャンプを継ぐ男(ネタバレアリ)

 シリーズ6作目「ロッキー・ザ・ファイナル」で完結したはずのロッキーシリーズが復活。ただし、主人公は
ロッキーではなく、かっての好敵手だったアポロ・クリードの息子に変更。かつ、これまで全作の脚本と4作の
監督を務めていたシルベスター・スタローンは出演と制作に回っています。
代わって、監督・脚本を務めたのは新鋭ライアン・クーグラー。もともとお父さんがロッキーの大ファンで、
子供の頃から何度も観させられていたという監督は、まだ一本も長編作品を撮ったことがなかった時分に、
直接スタローンに企画を売り込んだのですが、その時はスタローンに「ファイナルの終わり方に満足してる
から」と言われ断られたそうです(まるで、劇中でロッキーに最初コーチを断られたアドニスのようだ!)。
 その後、実際にアメリカでおこった警官による黒人青年射殺事件を描いた「フルートベール駅で」が
サンダンス映画祭で作品賞を獲るなど実績を残し、本作の映画化を実現させました。
 
 主演のアドニス・ジョンソンには「フルートベール駅で」でも主演を務め、「クロニクル」の気のいい優等生
役で注目を浴びたマイケル・B・ジョーダン。この人、目が優しいのが印象的。
そしてロッキー・バルボア役にはもちろんシルベスター・スタローン。つい、この前の「エクスペンダブルズ3」
では元気に爆破の中走り回ってた気がするんですが、老いて、病に蝕まれるロッキーの姿を好演してます。

 まーね、もうとにかく泣きました。多分映画後半の1時間はずっと鼻をすすってた気がします。こんなに
泣いたのは頬を伝った涙が鎖骨にたまってた「きっと、うまくいく」以来でしょうか。ただし、泣いたからと
いって『いい映画』だとは申しません。泣くか泣かないかはその時の観る側の心情にも大きく左右され
ますし、泣かせのテクニックにハメられてるだけかもしれませんから。
 その上で、本作でここまで気持よく泣かされたポイントを上げるならば、『音楽』ですかね。これは
クーグラー監督の特徴だと思うんですけど、非常に抑制が効いているんですよね。
 なにせ、自分が大好きだったロッキーの新作を作れるんですから、もっと無邪気に過去のオマージュ
シーンを入れたり、お馴染みのテーマ曲をそれこそオープニングからバンバン使う可能性も高かったはず
です。そしてそうなっていたら(僕を含めて)シリーズのファンほど冷めていたでしょう。
 しかしクーグラー監督はそこはグッと我慢して(?)、新しい主人公であるアドニスを立てるために、新しい
テーマ曲を繰り返し繰り返しかけて観客の耳に馴染ませていきました。そして、ロッキーが癌を告げられた
シーンで初めて「エイドリアンの愛のテーマ」を控えめに流し(控えめといってもこっちはその瞬間に一気に
涙腺決壊)、その後、治療を拒むロッキーにアドニスが「病気も治すのも戦いだろ、一緒に戦おう!」と
ハッパをかけてからの特訓シーンでは、それまで何度も流されたアドニスのテーマ曲に旧来の曲の断片
(メロディ以前の音だったり)を入れていくという心憎い演出! 「ロッキー」といえば試合シーン以外にも
トレーニングシーンが重要な要素ですが、本作は燃えるのに泣けるという見事なトレーニングシーンを
生み出してくれていました。難病物ならここでロッキーの闘病生活を描いて泣かせようとするところなんで
しょうが、アドニスのトレーニングと合わせてサラッと描いているのがやはり「抑制が効いて」ます。
 そして、お馴染みの「Gonna Fly Now」はクライマックスの試合の最後の最後まで温存し、まさに
必殺のフィニッシュブローのごとく炸裂させて、見事にKOしてくれました。

 不満点としてはアドニスと彼女との恋模様が、一作目のロッキーとエイドリアンのお互い身を寄せあう
ような慎ましい(それ故にアイススケートでのデートシーンやファーストキスのシーンの情感は最高)
ものに比べるとちょっと軽くトレンディだったり(彼女の難聴設定の必要性はいまだに謎)、
アドニスをライトヘビー級にしたために、ロッキーのヘビー級よりもアスリート性が高くなって、
無名の選手がチャンピオンといい勝負をするという点の信ぴょう性が減った気がしたところをあげて
おきます。ロッキーに「黙っててくれ」と頼まれたのに、アドニスの素性をマスコミにちくったミッキージムの
コーチを最後にロッキーがぶん殴るシーンがないのは良いのか悪いのか…(スタローン脚本監督だったら
やってたかなw)。

 演出的にびっくりしたのは中盤の試合での長回しシーンですね。1ラウンドだけかと思いきや
そのままセコンドのシーンから2ラウンドのKOまでカットを切らなかったのは凄かった。
個人的に映画でこういう予期せぬ長回しシーンがあると、単純に凄く得した気分になるんですよね~。
最近だと他に「キングスマン」の教会シーンや「カリフォルニアダウン」の嫁さんが崩れるビルから
屋上に逃げるシーンも好きでした。少し前だと「SRサイタマノラッパー3」のフェスシーンも最高。
逆に、最初からワンカット長回しが強調されてる映画(最近だと「バードマン」とか「ある優しき殺人者の
記録」とか…)だと、どうやって撮ってるのか気構えちゃって見ちゃって内容が入ってこなかったりする
ので、困ったりします。

 ロッキーシリーズ、特に一作目の「ロッキー」のテーマというのは「自分が何者かを証明する」ことだった
と思うのですが、本作は正しくそのテーマを継承している作品だと思いました。偉大なる父を持ちながら、
すでにその父がこの世にいないために対峙し、越える事が出来なかったアドニス。もし、アポロが生きて
いて直接反抗期とか迎えていたら、彼はボクサーにならなかったと思います。映画の前半で、ロッキーと
アポロの試合をユーチューブで見ている時にアポロではなくロッキーになって父親を殴っていた姿が
とても切なかった。
そんな「父を超えて、自分が何者かを証明するための戦い」の中でアドニスはロッキーとの擬似親子
関係を通して(ロッキーの家で息子の写真を見つけてバツ悪そうにしてるところとか良かった)、父を
否定するのではなく、受け入れる成長を見せてくれました。

そしてラストのロッキー・ステップでのシーンはもはや観てる側も映画と現実の区別がつかなくなるような
エモーショナルに襲われました。
「ロッキー・ザ・ファイナル」は確かに素晴らしい完結編でした、が、あのエンドクレジットシーンで、夜の
街並みを一人で眺めているロッキーの姿を見てなんとも寂しい思いをした人は僕だけではないでしょう。
それを、本作は夕方まで引き戻して、ロッキーの隣に継承者を立たせてくれました。そして映画の外では
作品はヒットし、スタローンは助演男優賞にノミネート…。本当に、世界中の「ロッキー」に元気づけられ、
影響を受けた子供たちを代表して親孝行してくれたアドニスとクーグラー監督には「ありがとう!」と
言うほかなかったです。

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# by koshibaken | 2016-01-08 23:55 | 映画

スター・ウォーズ フォースの覚醒(ネタバレアリ)

遂に始まったスター・ウォーズサーガの新章。初日にIMAX3D字幕版で観てきました。

まず冒頭からの1時間(ハン・ソロと出会うあたり)まではとても素晴らしかった。

BB-8のあざと可愛さなんて予想以上!
それにしても皆が普通にBB-8の機械音と会話してるのはびっくりしました。
今まではR2D2と会話成立させてたのはC3POくらいで、ルーク達はわりと
一方的な命令するかニュアンスでなんとなく理解してる感じで、ここまでがっちり
会話してた記憶がないんですが…スター・ウォーズ世界の住人も進化したのだなぁ…。

女性主人公のレイも良かった。砂漠で一人で暮らしながら、Xウイングファイターの
ヘルメットをかぶって空を見上げるシーンは、かって砂漠の惑星タトウィーンで宇宙に
思いもはせていたアナキンやルーク・スカイウォーカーを彷彿とさせてウルッときました。

フィンとポー・ダメロンでバディものっぽくなる展開は予想外だったのでスターデストロイヤー
から脱出するシーンは楽しかったです。ポー・ダメロンはウェッジ・アンティリーズの超上位
互換(いやウェッジも強かったけど!)って感じで観る前より株が上がったキャラでした。

地表でのミレニアム・ファルコンとタイ・ファイターのドッグファイトはこれぞスターウォーズの
空中戦といった感じで大満足! スター・デストロイヤーの残骸の中をくぐり抜けていくところは
EP6のデススター攻略シーンを思い出しました。

そして、お待ちかねのハン・ソロ&チュー・バッカの登場! ハリソン・フォードは流石に
外見は老けていましたが、「チューイ!」と叫ぶ声の張りは昔のソロまんなの力強さで
もうたまりませんでした(なので、僕は字幕版での観賞を強くオススメします!)。

そういやここで「ザ・レイド」コンビのイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンが出て来ましたが
大したアクションもなく退場したのは勿体無かったですね…。マッドドッグさんに「ブラスター
はファーストフードみたいで手軽すぎる」とか言って欲しかったw

とまぁ、前半は大いに楽しめたのですが、後半は「う~ん」と腕を組んでしまうシーンが
増えていきました。

まず、レイとフィンをダブル主人公の扱いにしたことで、後半でのレイが、フォースに覚醒したり、
カイロ・レンを倒したり、自分の親(ルーク?)との繋がりを感じたりと、主人公としてしっかり
やるとこやっている割には印象が薄かった。

そしてカイロ・レン。いや、ある意味美味しかったと思いますよ! 癇癪起こしてライトセーバーで
壁ぶっこわしたり、「ライトセーバー来い!」ってやったらレイに横取りされたり(あそこは「仮面
ライダーカブト」のカブトゼクターを思い出しました)といい味出してました。
ただ、カイロ・レン並びにファーストオーダー軍が今回の敵役としてしてはちょっとヘッポコ過ぎて
緊張感がなかったです。
スターキラーも、太陽エネルギーをすいとってレーザーにしたり、惑星自体を要塞にしてるので
さぞデススターより頑強なんだろうと思ったら、いつものようにシールド破られて爆破されて
「あ~あ」という感じでした。

EP4の展開をなぞるのはいいんですけど、あまりにそのまま過ぎて観ていて全て予想通りに
展開していくのでハラハラドキドキ感は皆無でしたね。カイロ・レンとハン・ソロのシーンもまぁ
そうなるでしょうって感じでした。


というわけで、充分楽しく観れはしたものの、期待以上(もしくは期待を裏切る)凄いものを観れた
という感じはなかったです。 まぁそれでこそJJエイブラムス!とも言えますが…。

思わぬ副作用といえば、今回EP7を観たことによって、嫌っていたEP1~3を再評価し始めてる
自分がいることですかねw

ただ、新たなサーガの幕開けとしては充分な出来だったと思うので、EP8の公開を今は楽しみに
待ちたいと思います。

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# by koshibaken | 2015-12-19 19:00 | 映画

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド(ネタバレアリ)

前編に引き続き、実写版「進撃の巨人」後編も観てまいりました。
前編の感想では全てにおいて期待ハズレと書きましたが、今回の感想はひとことで言えば大したことなかった!

というのもですね…結局、前後編と分けたのが問題だったと思うんです。町山智浩さんがラジオで言ってましたが
もともと一本だったのを予算を増やすために撮影直前に前後編に分ける事に変更したそうなんです。
最近、邦画で前後編に分ける作品は多いですが、そういうのって最初から2本に分ける計画で作られてるもん
だと思うんですよね(もしくは脚本書いたら一本で収まらないボリュームだったとか)。しかし、本作の場合は予算
確保のために急遽分けられたという…いってしまえば監督だかプロデューサーだかの見積もりの甘さが招いた
ミスですよね。しかも、2本に変更したことによって脚本を作り直すということもなく、本来カットした部分を復活
させるなどの応急処置でそのまま作ってしまうという…正直、これだけのビッグプロジェクトの作品でそんな事が
まかり通るのかと愕然としました。もし当初の予定通り一本だったなら、前編のグダグタした配給シーンやら
食事シーンやらがテンポ良くカットされてたんだろうなぁ…と思うと残念で仕方ありません。
 そして前後編に分けた事による更なる問題は、後編が始まるまでに我々観客が色々と予想する時間が
出来てしまったことです。しかも、やはり町山さんがラジオ等で「前編でおかしいと思われる部分は全て
伏線」「後編は謎解き編」「コンビニが出る」「難しい権利問題をクリアーしてくれた」といった材料を投下
してくれたおかげで、「壁の外は現代の日本なのでは?」「権利問題ということはなにか実在のものが
出るのか?」などと、色々と予想をたててたもんですが、蓋を開けてみると、ことごとく予想の範囲内、
しかも予想した中ではかなり下の方だったいうことで、最初に言った「大したことなかった!」という感想になっちゃうわけです。

それでは、ここからは前編と同じく時系列に沿った感想(というツッコミ)を入れていきます。
冒頭のエレンの幼少期の回想シーンでは大方の予想通り父親役で草薙君が登場。
前編の感想で僕はエレンがアルミンに夢を炊きつけておいて、アルミンが発明がしたいと言ったら
「特定知識保護法で捕まっちまうぞ」と言った事に腹をたててましたけど、まさに父親がその法律に
よって捕まっていたというトラウマがあったんだなぁと解釈出来ました。それはエレン正直すまんかった。

回想シーンの後は巨人化から解けたエレンの尋問シーン。ここは原作ではアルミンがデキるところを
見せたり、ミカサのエレン命っぷりが分かったり、エレンがわけわからないなりに抗おうとしたりと
主要キャラの魅力が発揮される名シーンだったはずなんですが、本作ではアルミンは説得力に欠ける
擁護、ミカサは前編に引き続き助けるのか助けないのかフラフラ。エレンは垂れた前髪で目もよく見えず
オロオロしてばかりで全くいいところなし! 唯一、クバルを演じた國村隼さんは良かったです。静かで
丁寧な言葉使いながら怖さを醸しだしてて、クライマックスの変身シーンでの「ホワーーーー!」って
叫びとのテンションのメリハリも相まって、役者陣では後編のMVPだったと思います。ここでネタバレ
をしかけたピエール瀧演じるソウダを、観客が身構えるより早い食い気味のタイミングで撃ち殺させる
のも良かったです。ただ、ソウダがこの程度の役割で退場させられたのは勿体無かったですね。
前編でも思わせぶりな詩読ませたり、回想シーンでも登場してたのに…。エレンの父親との仲もあって
エレンに肩入れしていたのなら、エレンの兄貴(明言はされてませんがそう受けとるしかないでしょう)の
シキシマにも内通者として協力してたとかにしてた方が自然だったと思うんですがね…。

原作ではこの後、大岩をエレンに運ばせて壁の穴を塞がせるというアルミンの案により、エレンの
存在価値を認めさせるわけですが、本作では不発弾を普通にトラックで運ぼうってことになったので
ますますエレンはお役御免。で、まぁどうしょうもなくなったところでシキシマ巨人が現れてエレンを
奪取していきます。

白い部屋でのシキシマのエレン勧誘シーンは、過去フィルムは不気味だったし、デッキチェアと
シャンパンは面白かったので楽しく見れました。
かたや残されたアルミンやミカサ達のシーンはまたダラダラしててストレス。サシャがミカサに
雑草をあげるシーンのあと、また芋あげるシーンとか…ひとつで良かったんじゃないの!?
そういや、TBSラジオウィークエンド・シャッフルで宇多丸さんが前編の評論をした時に
「ひとつのシーンでBGMをふたつ以上かけるのはダサい」と言っていて、その時はあまりピンと
こなかったんですが、このサシャがミカサに雑草をあげるシーンで、2人がほっこりした時に急に
楽しげなBGMに変わった時には「これかー! 確かにダサいwww」と思いましたw

この後、シキシマ率いる元調査兵団とエレン達との対峙シーンとなりますが、ここで、前編の
爆弾泥棒はシキシマの部下だったことが明かされます。前編で麻袋のマスクを脱ごうとして
やめてたので、当然そこまでの登場人物の誰か(僕の予想はサンナギかソウダかクバル
でした)だと思っていたら、何者でもなかったという…。前編から後編へ投げられた謎のひとつ
だと思っていたのに、興ざめもいいところでした。

ここでシキシマは「民衆を支配する政府を倒すために内側の2つの壁を壊し巨人に襲わせる。
そのために民衆が襲われても良し!」という、いかにも「さぁ主人公側のみなさん、反抗して
ください」という馬鹿すぎる演説をかましてくれます。こういうのって最後の最後でテンパった
悪役が叫ぶ本音だと思うんですけどね…。悪役がこれだけお膳立てしてくれてるのにエレンと
きたら格好良く燃えるセリフかましてくれるのかと思いきや、前編でのアレを思い出させる
「ウワアアアアアアアーーー!」という絶叫。後編は「心が叫びたがってるんだ」が同じ日に
公開されましたが、こちらは「エレンが叫びまくってるんだ」でしたね…。

とにかく本作は、その場その場で話を展開させるために都合よく動かされるキャラクター達ばかりで、
お話を引っ張っていく魅力のあるキャラ描写が皆無でした。サンナギやジャンももっと美味しいキャラに
出来たはずなのに雑な退場のさせ方でしたし、ハンジは逆にブレないキャラではありましたが、エキセン
トリックなキャラと思わせておいて、実は正義感や職務を忠実にこなすという深みもなく、最後まで
トリガーハッピーな感じでした。ミカサにおいては本当に最後までフラフラしててヒロインとしての魅力
皆無。説明ゼリフはダサいといいますが、ミカサはもうちょっと何考えてるか説明してくれ! と思い
ましたね。
こういったキャラの魅力の無さは演出・脚本双方の責任だと思いますが…。

クライマックスは壁の穴を塞ごうとするエレン達を超大型巨人だったクバルが邪魔するんですが、
見てる間「とりあえずここは塞がせておいて、また都合悪くなったら巨人になって壊せばいいん
じゃね…」と思ってしまいどうにも盛り上がらず。そして何故か心変わりしたシキシマが綾波レイ
よろしくエレンを助けて不発弾もろともクバルと自爆。
まぁ内側の壁は2つあって、集めた爆弾は破壊されたから、不発弾で壁一つ壊しても意味がない
という事で、クバル倒して弟助けるという事にしたのかもしれませんが、どうにも心変わりの唐突感
は拭えませんでしたねぇ…。

ラストは予想通り壁の外には荒廃した日本(東京)と海があって、これまたありがちな感じの監視者達の
描写があって終わりました。ここで、監視者が結構ハッキリ聞き取れる日本語喋ってるのにご親切に
字幕も入れてあったのがダサかったなぁ…いっそ何言ってるのかわからないようにする不親切エンドに
した方が良かったのでは…(まぁそれでもありがちですが)。

というわけで、終わって見れば前編の方がまだ面白かったなという感想なんですが、それもこれも
最初に言った2つに分けた事が問題だったと思います。

あとですねぇ…もともと原作の「進撃の巨人」って、いまでこそキャラ人気で語られがちですが、
最初は巨人のビジュアルや立体機動装置という発明、いきなり主人公が死ぬ(その後巨人として
復活)展開など、今までの見たことのない斬新さ、若き無名の作家が既成概念という壁をぶち壊して
いきなり新たな地平を切り開いた事が、漫画を読み慣れた人達にとっても新鮮に受け取られて
評価されたと思うんですよ。
だからこそ、映画化にあたって原作者サイドが(もうすでに大ヒットして地位を確立した)原作通りには
作らないので欲しいと要望を出したと思うんです。「進撃の巨人」とは過去の遺産にすがりつくのを
良しとしないフレッシュな作品であるべきだからと。
それに対して、やれ「現代版サンダとガイラだ」とか、「このシーンは過去のこの映画のオマージュ」
なんてやるのは、真逆の行為だったと思うんです。

前編の時にも書きましたが、僕は原作信者というわけではないので尚更、原作とも、どっかで見た
既視感のある映画とかでもなく、たとえ破綻してても「こんなの初めてー!」と叫びたくなるような
フレッシュな「進撃の巨人」が観たかったです。

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# by koshibaken | 2015-09-26 00:35 | 映画

ナイトクローラー

 ノーマークな作品だったんですけど、今月頭に映画館で予告編を見て「これは面白そうだぞ!」と思い、
観に行ったら期待通り素晴らしい映画でした。youtubeに冒頭5分間と予告がセットになった映像が公開
されているので、まずはそちらを見てもらいたいです。


 主人公は事件・事故現場のスクープ映像を撮影しテレビ局に売る報道パパラッチで、刺激的な映像を撮る
ためにはヤラせや強引な取材も厭わないという男。まぁ普段みんなで「マスゴミ」やら「ウジテレビ」なんつって
忌み嫌ってる輩のかなり悪質なヤツですよ。で、この映画が優れてるのは、現実にいたら超嫌なヤツである
主人公を映画の中ではつい応援してしまうように出来てるところなんですよね。
 例えば上に貼った冒頭のシーン。ワイヤーを盗み、ガードマンを殴って腕時計を盗みと最初から犯罪に
手を染めている姿が描かれていて、このままではとても応援出来る感じではないんですが、盗品を売りに
行った先で自分を雇ってもらえるように頼むところで、取りつく島もない社長に対し「学はないが勤勉だよ」
「今からでも働く」「最初は給料なくてもいい」と、食い下がるんですよね。それに対して最後に「盗っ人は
いらない」と、まぁ当然っちゃ当然な事を返されてしまうんですが、ここでもうちょっと主人公に肩入れ
しちゃうんですよね。なんなら『最初にそれ言って断れよ。意地悪だなぁ』と、正論を言ってる社長の方が
悪者に見えちゃうくらいに。
 ちなみに、そのキツイ一言を言われた後に「言うねぇ~w」って感じで指差して笑う主人公の姿、ここでは
痛々しい限りなんですが、映画の最後の方でも同じような事をやっています。でも、受ける印象は全く
違うんですよね。つまり主人公自身は映画の始まりと終わりで基本的には変わっていない(成長して
いない)、変わったのは周りの環境だということを、こういうちょっとした描写で分からせてくれるあたり
上手いなぁと思いました(最後に車を運転してるところで腕時計を見るシーンがありますが、あれ多分
最初に盗んだ腕時計ですよね?)。
 他にも、家族や友人も無く家ではテレビとネットだけを見る孤独な姿が描かれたり、事故現場での
撮影シーンではやたらヒロイックで感動的な音楽が流れたり、成功した後も調子に乗って遊んだり
する事もなく、一人でアイロンをかけてる姿が映されたりと、本来はクズな悪人である主人公に観客が
自然と肩入れ出来るようにと、脚本と演出の両面でかなり気を使われていました。
 むしろ、この映画における『悪』は、「人が死んでるのに!」とか「放送倫理的にNG」とか言って、
主人公や、その協力者である女性ディレクターの邪魔をする、助手やテレビ局の人間でした。彼らの
言ってることは正論であり、モラル的に正しい事なのですが、映画の中では「正論を吐くだけで自分
では何もしない愚鈍なクズ」と描かれていて、観客のヘイトを一身に受ける役周りになっています。
 なかでも最高だったのは主人公に雇われた助手。冒頭で主人公はクズ鉄業者の社長に手痛い
目に合ったにも関わらず、自分が人を雇う側に回った時にやり返すのではなく、紳士な対応の面接
をしていました。にも関わらずこの助手は面接には遅刻してくるわ、自己アピールも出来ないわ、
少しでもいいから最初から給料をくれと要求するわ(これは本来はマトモな要求ですが、冒頭の
主人公が『最初は給料なくてもいいから働かしてくれ』と言っていたことの対比です)と、クズっぷり
を発揮。雇われた後も自分のミスは言い訳するわ、自分は安全圏にいながらも、主人公の行動を
倫理的にたしなめるなど、「何様だ!」という行動を連発。
 それでも、2人しかいない会社の副社長に任命されて無邪気に喜び、昇給の希望額を言えと
促されて「な…75ドル(もとは一晩30ドル)?」というあたりでは、愛着も湧いてきたのですが、
スクープの報酬の半分をよこせと主人公に迫ったことで観てる側のヘイトは最高潮!
その後、主人公に手痛いしっぺ返しを食らうところが、この映画で最高にスッキリしたシーンでしたw

 本作は、単純に話の筋だけ追えば、学歴も仕事もない孤独な中年男が、知恵と努力のDIY精神で
成り上がっていき、地位も名誉も女も手に入れるという、典型的な痛快サクセスストーリーなんです
よね。ただその手段が悪いだけで。
 でも、そもそも現実では出来ない事やモラル的に許されない事をやってみせて、それを観た人の
モノの見方や、価値観に変化を与えてくれるのが優れた映画や創作物の力だと思っているので、
そういう意味では本作は今年観た中でも上位に入る素晴らしい 映画体験でした。
 特に、悪の主人公を描いているのにも関わらず、モラルを気にしてなんらかの報いを受け
させてしまう作品も多い中、本作は意外と上手くいかせてしまうのがまた痛快でしたね。

 主人公を演じたジェイク・ギレンホールはこれまでのちょっともっさりした感じは皆無で、マシュー・
マコノヒーを見てるような気分にもなりました。黒目に光がなくて怖いんですけど、わりと終始汗をかいて
いて肌がテカってるところにギリギリの人間味を感じられたのが良かったです。
 あと、ジャンルとしてはアクション映画では無いんですが終盤のカーチェイスシーンも大変見応えが
ありました。主人公が逃げる側でも、追う警察側でもなく、その2台のチェイスを撮影する側というのが
新鮮でした。

 というわけで、非常にシンプルなサクセスストーリーでありながら、現実世界ではモラル的にNGと
される世界観や主人公を描くことで見る側の観念を揺さぶってくれる刺激的な映画でした。物語も
映像もソリッドで格好良かったです。公開規模はさぼど大きくはありませんが是非ご覧ください!
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# by koshibaken | 2015-08-27 03:27 | 映画

ウォーリアー (ネタバレアリ)

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でマックス役を演じたトム・ハーディーが主演した2011年の作品。
当ブログでは「ダークナイトライジング」公開時に、早くこれも日本公開してくれないかなぁと書いていたん
ですが、その後、劇場公開もソフトリリースもされず、字幕のついてない海外版のブルーレイを買うか否か
ずっと悩んでいたんですが、遂に今月からソフトのレンタル&リリースが始まりました(新宿のシネマカリテ
でも限定上映あり)。で、早速観てみたんですが……


100点満点の映画でしたよーー(号泣)!!!!!

観る前は総合格闘技(MMA)のリングで戦う兄弟の話と思っていたのですが、実際にはそこにお父さんが
絡んだ三人の男の愛憎を描いた物語でした。そして、このお父さんであるパディ・コンロン(演じるはニック・
ノルティ)が、観ててもう切なくて切なくて仕方なかった!

独居老人であるパディの元に14年ぶりに息子のトミー(トム・ハーディー)が訪ねて来るところから映画は
スタート。最初は二人とも再会を喜んでいるようなんですが、徐々にトミーがパディを責めはじめて不穏な
空気に…。ここで、パディがかってアルコール中毒だったことと、トミーは母親と逃げ出し、その先で母親が
死んでしまったことが分かります。現在は更生療法に成功して酒を断って1000日というパディに「酒を
飲んでる方があんたらしいぜ」と酒を薦めるトミー。このイヤ~な責めに遭うパディに同情しつつも、それ
だけ酷い親父だったんだろうなぁ…と、回想シーンがないだけに推察するしかなく、切ないなぁと思いながら
観ていました。

そして、兄貴のブレンダン(ジョエル・エドガートン)。彼はかってトミーや母親と一緒に逃げずにパディの
元に残ったのですが、現在は絶縁状態。パディがブレンダンに会いに来ても家に上げずに「話があるなら
手紙か電話で」と、冷たい態度。そこで、パディからトミーが戻ってきたと知らされると、「俺が昔、あんたの
元に残ったのは、父親が一人占め出来ると思ったからだ、だが、あんたは弟に対するように俺にレスリング
を教えてくれなかった!」と責めたてるブレンダン(パディはトニーが5歳の頃からレスリングのコーチをして
いた)。あぁなんと愛憎渦巻くトライアングル! この後、家の中からブレンダンの子供が現れ、パディをさし
て「あの人、誰?」と聞いてもブレンダンは「近所の老人だよ」と言ってドアを締める。このイヤ~な責めに遭
うパディに同情しつつも、それだけ酷い親父だったんだろうなぁ…と、回想シーンがないだけに推察するしか
なく、切ないなぁと思いながら観ていました(二度目)。

さて、この交わりそうで交わらない兄弟が新たに開催される総合格闘技の大会「スパルタ」に出場する事に
なります。この「スパルタ」、格闘技好きの資産家がUFCに対抗してテレビ局と共同して立ち上げ、大会の
目玉としてロシアの強豪であるコーバをアメリカ初上陸させるというもので、実際に2008年にヒョードルを
参戦させた大会「アフリクション」を思い起こさせてくれます。

トミーは趣味(?)で通っていたジムで、マッドドッグという「スパルタ」に参戦予定のプロをスパーリングで
ノックアウトし、その様子がユーチューブで流れ話題となったことで参戦。ブレンダンは子供の手術代で
借金がかさみ、教師の給料だけでは暮らせないので、ストリップ小屋の駐車場で行われているMMAの
試合で金を稼いでいたところ、学校にバレて停職。そこで、旧友のフランクのジムで鍛えながらMMAで
更に金を稼ごうとしていたところ、そのジムから「スパルタ」に出るはずだった選手が直前で怪我をした
ことで、フランクに代理で出してくれるように頼み込んで参戦決定。
 この手の作品では、無名の主人公がどうやってプロの大会に出たり、時のチャンピオンとの対戦カード
を組んでもらえるのかの理屈をつけるのが大変ですが、MMA(しかも新設の)大会では実際にありえそう
な展開に持っていったのは上手いなぁと思いました。

 試合に向けて盛り上げるために絶対に欠かせないトレーニングシーンでは、トミーとブレンダンそれぞれの
トレーニング風景、さらにロシアからコーバ上陸の様子など「スパルタ」に向けて盛り上がっているニュース
映像を、ベートーベンの「歓喜の歌」をマッシュアップした曲を流しながら画面分割して見せる演出になって
いて、これには「ロッキー4」を思い出してテンション上がりました。

 そして遂に始まった「スパルタ」ですが、大会や試合の様子も実際にありそうな感じで素晴らしかったです。
トミーのファイトスタイルはワンパンで決める打撃系。ユーチューブで人気に火がついたという点も合わせて
キンボ・スライスやタンク・アボットを彷彿とさせます。片やブレンダンはサブミッション系。学校の授業で作用
点と半作用点を教えていたのもフリになってる?
 ここで、テレビ解説がブレンダンの事を「物理の先生」とやたらキャラづけしてたのも、フジの「K-1」「PRIDE」や
TBSの「K-1マックス」「DREAM」などの中継を観ていた経験からすると、あるあるって感じでしたし、
ブレンダンのセコンドのフランクが常に指示を飛ばし続けていて、その指示の内容も的確なもので、
こういう細かいディティールがちゃんとしてると、しっかりストーリーに乗っていけるなぁと改めて
感じました。ちなみに同じくMMAを題材とした韓国映画「激戦 ハート・オブ・ファイト」は、この点で不満
が大きかったです(セコンドについた主人公があまり指示飛ばさなかった所とか)。

二人を応援する脇役たちの描写も愉快で、ブレンダンを停職させた校長や、試合に反対していた妻は
家でテレビ中継を見て大はしゃぎだし、教え子たちは自作のTシャツを作ってドライブイン・シアターで
大盛り上がり。トニーの事をユーチューブで見て、イラク戦争の時に沈みかけた装甲車のドアをこじ
開けて命を救ってくれた男だと知った海兵隊員たちはトミー入場時に客席で軍歌(?)を大合唱。
 そんな中パディだけは相変わらずで、トミーのセコンドにつき、入場時にグレイシートレインを
やるみたいな感じで両肩に手を置こうとすると「触んな」とあしらわれ、ブレンダンの入場時に横から
「頑張れ」と声をかけても、チラッと一瞥されて後は無視。そんな健気な姿がもう切なくて切なくて…。

 クライマックスは兄弟による決勝戦。その前夜、トミーはひときわ強くパディを口撃し、傷ついた
パディは1000日続いた禁酒を破り大荒れ。トミーは酔いつぶれたパディを後ろから抱きしめ
寝かしつけた後、単身試合会場へ。そしてこのタイミングで、イラク戦争の英雄と思われていた
トミーが実は無断離隊者だったことと、離隊した理由がアメリカ軍の空爆の誤爆で仲間を全て
失ったせいだったことが分かる。つまりトミーは、父親からも兄貴からも裏切られ、祖国からも
酷い仕打ちを受けて傷ついた男だった。そんな彼を救えるのは誰か? それはリング上で相対
するブレンダンしかいない!
 もうこの兄弟対決は途中からは涙なくしては見れないものでしてね…。ブレンダンの関節技に
よって肩を脱臼するも戦いを続行しようとするトミーと、「もうやめよう」と訴えるブレンダン。
客席からブレンダンと目があい「引導を渡してやってくれ」とうなずくパディ。
 ラストはトミーがブレンダンにグラウンドでチョークスリーパーをかけられ(この姿勢は前夜、
酔っ払ったパディをトミーが抱きかかえるシーンと対になってます)、ブレンダンが「もうタップ
しろ」と何度訴えてもタップせず、最後に「愛してる」という言葉を聞けて遂にタップするという
ものでした。
 まぁ考えてみれば、トミーが明らかに肩動かないまま戦っているのを見て、レフェリーが
ドクターチェックを要求しないのは変だよなぁ~とか、パディがトミーのセコンドについて
外れた肩を治してやるとかすれば更に熱いシーンになったのでは? とか思わなくもない
ですが、最後は極力トミーとブレンダンの2人の世界に余計なものは挟まないという演出
なんだろうなぁと思いました。金網越しに望遠カメラで撮る映像も、実際のMMA中継っぽい
リアリティを出すと同時に、2人の戦いを離れたところから見守るしかないというパディの立場を
追体験させる効果も出ていて良かったです。

最後にトミーとブレンダンがお互いに体を支えあって退場する様子を、パディが優しげに、かつ
その中に加われない悲しさも醸し出しながら見つめる姿は、マイケル・ファスベンダー主演の
「FRANK-フランク-」のラストを彷彿とさせる切なさがあって、もう…ああ…もうって感じでした。

というわけで、MMAシーンでは非常に熱く盛り上がれつつ、三人の男たちの切ない愛憎ドラマに
大いに泣かされるという、長い間待たされた甲斐のある素晴らしい映画でした。
 ちなみにソフトには日本語吹替えも収録されているんですが、この吹替えが非常に良い出来
でしたので、一度字幕で観た人も吹替えで観直して頂くのがお薦めです!

ウォーリアー (ネタバレアリ)_d0198868_2083419.jpg
# by koshibaken | 2015-08-10 20:09 | 映画


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